@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

花咲爺誉魁(はなさかぢゝほまれのさきがけ)

翻刻実況風の動画

その1
youtu.be

その2
youtu.be

その3
youtu.be

その4
youtu.be

 いつもの「みんなで翻刻」ではなくて、わたしが(ブログ筆者 chinjuh)が勝手にみつけて読み始めたものです。意味を軽く説明しながら音読して、文字おこしまでその場でやってます。1動画20〜30分くらいあって、全部見ると2時間くらいかかります。何かの片手間にのんびりごらん下さい。


はなさきぢゝほまれのさきがけ、はなさきじじほまれのさきがけ
花咲爺誉魁
発行年:不明(幕末、文政〜嘉永年間?)
作:楽亭西馬
画:一勇斎国芳歌川国芳
国会図書館デジタルコレクション所蔵
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/10301481/1/1

 序文に「西馬」の署名があるので、おそらく本文も楽亭西馬の作だと思われます。出版年のヒントになりそうな情報としては

とのことです。巻末に同時期に出た草双紙の広告があるので、ひとつひとつ見ていくとどれかに出版年が書いてあるかもしれませんが、現在わかっているのはこのくらいです。

登場人物

白(しろ):庄兵衛の犬
正直庄兵衛:正直じいさん
よく八:庄兵衛の隣に住む欲深じじい
大臣の殿(だいじんのとの):庄兵衛の話を聞き、正直の褒美を与える

物語

 昔話の「花咲じじい」の話そのもの。

 正直者の庄兵衛は日頃かわいがっている犬の白(しろ)に袖を引かれて山へ行き、白が転んだところを掘ってみると土中から黄金が出た。それを見ていた隣の欲深じじい・よく八は、庄兵衛から犬を借りて山へ行くが、犬が一向に転ばない。無理やり転ばして、その場所を掘ると、犬の糞や蛇やムカデなどが出てくる。怒ったよく八は犬を打ち殺して埋めて帰る。

 それを聞いた庄兵衛が山へ行くと、白が埋められたところに大きなクスノキが生えていた。その木を挽き臼を作っていろんなものを挽いてみると、粉にまじって小判の小粒が出てきた。そこへ よく八が現れて、無理やり挽き臼を借りて行くが、よく八が回すと犬の糞やそのほかの汚らわしいものばかり出てくるので、怒って挽き臼を囲炉裏で燃してしまった。

 庄兵衛が臼を返してほしいと言いに行くと、臼はすでに灰になっている。庄兵衛は灰をざるにいれて持ち帰り、街道の枯れ木にのぼってまいてみると、不思議なことに花が咲き始める。そこへ大臣(殿様)の行列が通り、殿様はいたく感心して庄兵衛に沢山の褒美をとらせる。

 それを聞いたよく八は、囲炉裏に残っていた灰をとって街道で殿様の行列を待つ。ここぞとばかり灰をまきはじめるが花は咲かず、殿様の行列は灰を被ってしまう。怒った家来たちよく八をひきずり下ろして刀で斬り殺してしまう。

メモ

くすの木は石になるもの
 「石となる楠も二葉のときは摘まるべし」という諺(ことわざ)によるもの。

いわゆる「ここ掘れワンワン」のシーン
序文の挿し絵

翻刻

 以下は動画の中で作ったものです。打ち間違いを少し直しました。()内はふりがなで、【】内は注釈です。コマ+数字は国会図書館デジタルコレクションに対応してます。
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/10301481/1/1

コマ4

花咲爺(はなさきぢゝ)誉魁(ほまれのさきがけ)

一勇斎
  国芳

積善(せきぜん)の家(いへ)には福(ふく)来(きた)り積悪(せきあく)の門(かど)には禍(わざはひ)来る
さればむかし噺(はなし)のかち〳〵山 桃太郎(もゝたらう)の
宝物(たからもの)舌切雀(したきりすゞめ)の古(ふる)つゞら
みな一時(いちじ)の戯(たはむれ)なれども
おのづから勧懲(かんちやう)の道(みち)にして
子供衆(こどもしゆ)を教(みちびく)一助(いちぢよ)なり此(この)草(さう)
紙(し)も夫(それ)に同じく枯木(かれき)に再(ふたゝ)び
花咲爺(はなさきぢゝ)正直(せうじき)の頭(かうべ)に神(かみ)のやどり木(ぎ)なれば
とかく善道(よきみち)にいり給へかし
  其みちをまたもしたひて
   ふる事は犬の足あと梅の赤本 西馬

コマ5

むかし
ある所に
正ぢき
庄兵衛といふりちぎ
いつへんのおやぢあり
あるとき白き小いぬを
かひてあさゆふしよく
もつをあたへかはゆがる
ことわが子のごとく
そこらへいでゝ
もとりおそければ
たづねにいでければ
此白いぬも庄兵へを
したひおやのごとく
あまへけるいつもの
ごとく庄兵へ山へかせぎ
に行に白いぬも

つき
きたり
しが
ふと
いぬ
ころ
びて
おき
あがり
庄兵へがすそを

くはへて
かの所へ
つれ行ゆへ
庄兵へ心
つきて
くはをもて
その所をうがつに
こがねあまたいで
たり此やうすをとなり
のよく八といふもの見てゐたりける

コマ6

かのよく八と
いふものは心
がけあしきもの
にてつね〴〵ひだうの
事のみしてくらしけるが
きのふ山にて庄兵へが白いぬ
のかげにておほくのかねを
ゑたるを見ておのれがひだう
の心ざしはしらずかのいぬを
かりてわれもたからをえんと
となりへ行けるに白いぬ
よく八とつれだち行を
さらによろこぶていなく
行けるにそここゝあるけ
どもいつかうころぶけしき
もなしよく八きをいらちて
むりにいぬをころばしその
あとをくわもてほりうがてば
へびむかでのたぐひいぬのくそ
おびたゝしくいでゝかねはさらに
なしひごろたんきじやけんのよく八

大き
にいかりて
くわをもつて
かの白いぬを
うちころし
     ける

〽うぬ
ふてへ
ちく
せう
めだ

コマ7

かくて
よく八は白いぬを
うちころして
いゑにかへり庄兵へ
につけていふやう
かよう〳〵のしまつ
ゆゑにくさも
にくしにんげんを
ばかにするちくせう
はらいせにうちころし
て山にうづめたりと
きひて庄兵へなげく
事大かたならず
さらばそのうづめ
たる所をしらせ給へと
よく八をともなひ山に
行てみればふしきや
白いぬをうめたる所に
大きなるくすの木はへ
いでたり庄兵へは

なげきのあまり
さらば此木こそかのいぬ
がかたみなりとてくすの木を
ひききりかえりて引うす
をこしらえけり

〽やれ〳〵かはひや此下に
しろめがうづめて
       ござ
         る

〽にくい
  ちく
   しやう
    めだ
きさま
 も
あきら
 めて

しま
はつ
せへ

コマ8

庄兵へはかのくすの木を
かたみなりとて引きり
かへりてこれにてひきうす
をつくりけるにもとより
くすの木はいしに
なるものなれば
かたくいしうす
のことくにでき
ける庄兵へは此
うすをもて
さま〴〵の
ものをひくに
そのひい
たるこの
うちに【挽いたる粉のうちに】
こばん
小つぶの
まじりて
いつるなれは
    さても

ふしきなる事なりこれもかの
白いぬのわれにふくをあたふる
ものなりとよろこひけるに
つけてもたゞふひんいやまし
ける此おりからとなりの
よく八きたりこのありさ
をみてさても
きみやうの
事なり
こゝろみに
われにも
すこし
かしたまへと
そのうす
をかりて
かえりぬ

コマ10

庄兵へはだいじに
おもふうすなれども
よく八がひごろの
きしつゆゑかさずば
なにかにあたをせんと
それをおそれてかの
うすをかしてやりしに
さらにもどさぬゆゑ
とりに来りうすを
あきたらばかへし
くれよといふに
よく八まなこを
からしいうやう
さて〳〵にくきいぬ
めがしわざかな
いちどならず
にどまでわれに
かゝるけがれたるものを
あたへたりそのうすも

たゞは
かへす
まじと
まき
わりを
とりいだし
いろりの
はたにて
こと〴〵く
うちわり
火のなかへ
いれて

もし
たり
ける

〽やれ〳〵
なさけない
事をさつ
しやる

コマ11

正じき庄兵へはせんかた
なければかのうすを
もしたるはいをとり
かへりておもふやう
かくまで
しやうある

いぬ
のぞん
ねん
なれば
せめて此はいをもて
かれがはなみをさかせて

やらんとそれより
はいをざるにいれて
かゝえかいだうへいでゝ
かれ木のうへに
あがり
ゐたり
ける

かゝるおりしも
たいしんのおとをりにてさきかちの
ものいふやうそれにおるはなにもの
なりとあるにこれは日本一のはなさき
ぢゝなりいふにしからばごぜんにてはなを
さかせべしと仰ける

コマ12

正ぢき
庄兵へは
おふせにした
がひはいを
つかんでかれ
木にまき
けるにふしき
なるかな

かゝる
かれ木に
たちまち
はなひらき
にほひかう
ばしくみごと
なる事いはんかた
なしたいしんの
とのはなはだごかんありて
あまたのごほうびを下され
そのうへながくおふち【お扶持】を下されける

〽そのほう
正ぢきなる
ものゆゑ
てんより
さづける
所なり
いぎなく
とりおさめ

〽いかばかり
ぢゝが
身に
とり
ありがたい
しあはせ
でござり
ます

コマ13

よく八は
これを
きゝて
やむ事をゑず
又〳〵よくしんおこり
かのはいはわがうちの
ゐろりなるをもて行たる
なりしからば此たびこそ
われにあたふるとく【我に与ふる得】
なりとて□□□の【いろりの】
はいとりもちてこれも
かいだう【街道】のかれたる
なみ木にあかり
今やとまつ所へ
さるおだいみやうの【さるお大名の】
おとをりにてそれに
をるは何ものと
とがめられ
これははな
さきぢゝなりと
いふにしからば
さかせ見すべし
と仰あるに
よく八は
しめた
ものと
はいをしたゝか
つかみてまき
けるにはなは
さらにさかづし
ておりしもふきくる
かせ【風】につれそのはい

ちつて
とのもきん
じゆ【近習】のもの
やにはによく八
を引ずりおろし
さん〴〵に
きられ
ける
とぞ

コマ14

それよりよく八はほう〳〵いへにかへりけれども
そのまゝたをれてしゝたりける【死したりける】ひだう【非道】
とんよく【貪欲】のむくひぞおそろしく
正じき庄兵へはおほくのかねを
えたるうへとのよりごふち【御扶持】
てうだいにて【頂戴にて】よき やうしを【ようしを】【養子?】【容姿?】
なしなにふそく
なくくらし
けるとぞ
めで
 たし
  〳〵
   〳〵〳〵

一勇斎
  国芳画【歌川国芳

金太郎一代記(きんたらういちだいき)
義経一代記(よしつねいちだいき)
桃太郎誉家土産(もゝたらうほまれのいへづと)
舌切雀(したきりすゞめ)宿(やどの)さかえ
花咲爺(はなさきぢゝ)誉(ほまれの)さきがけ
十二月(じうにつき)子供(こども)あそび
仮名手本(かなてほん)忠臣蔵(ちうしんくら)
きつねのよめ入
音(おとに)聞(きく)狸(たぬきの)腹(はら)つゞみ
菅原(すがはら)伝授(でんじゆ)手習(てならひ)鑑(かゞみ)

せけんむるい 御おしろい 美艶仙女香
同 黒あぶら 美玄香
京ばし南へ
 壱丁目門
   坂本氏

尾州名古屋下【中?】下樽屋町
  玉野屋新右衛門
江戸芝明神前三島町
  和泉屋市兵衛