@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

妖相生の盃(化物三つ目大ぼうず)

ばけものあいおいのさかずき
妖相生の盃
 https://honkoku.org/app/#/transcription/2FA4C9D7F22F5F14E2E66E7766E25CC1/1/

ばけものみつめおおぼうず(ばけものみつめおぼうづ)
化物三ツ目大ほうい
 https://honkoku.org/app/#/transcription/6D490FD1EB93AF5B9FFAA67A6F7B094F/1/

# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。翻刻は「大ほうい」のほうでしています。

出版年:1762(宝暦十二)
画・富川吟雪
作・不明
所蔵:国会図書館
 
 「妖相生の盃」と「化物三ツ目大ほうい」は同じ内容の本なのですが、なぜか別のタイトルで国会図書館に所蔵されています。しかも「大ほうい」は、大ほうつ(ぼうづ=坊主)と読むべきところを読み間違えたまま整理されてしまっているようです。

登場人物

越後勢
 越後の三つ目大坊主
 大坊主の娘、ろくろ首のお六
 家老・猫又三毛右衛門(ねこまたみけえもん)

信濃
 信濃の飯びつ古蔵(めしびつふるぞう)、大飯びつ
 めしびつの手下、古椀(ふるわん)
 同じく、平皿(ひらざら)

天目山勢
 見越し入道(みこしにゅうどう)
 入道の息子、見越しの介(みこしのすけ)
 その家来、いたち佐兵衛門
 同じく、かわづ池介

軍師
 天竺浪人・一眼早速之介(いちがんさそくのすけ)、一つ目の化物
 浪人の母、安達婆(あだちばば) 有名な安達ヶ原の鬼婆

その他多くの古道具の化物たち

あらすじ

上巻:
 越後の三つ目大坊主にはろくろ首のお六という娘がいます。信濃の飯びつ古蔵(大飯びつ)はお六をものにしようと強引に結納の品をおくりつけてきますが、お六には見越しの介という恋人がいて密かに駆け落ちしてしまいました。
 怒った飯びつは仲間を集めて大坊主に戦いを挑みますが、突然巨大な猪が現れて飯びつの軍勢をけちらします。そこへたまたま天竺浪人(流浪の浪人者)が通りがかり、猪を組み伏せますが、同時に手傷を負ってしまいました。
 駆け落ち中のお六と見越しの介が通りがかり、天竺浪人に薬を与えて介抱しました。恩を感じた浪人は飯びつの追っ手をやっつけて二人を助けます。

下巻:
 お六の恋人である見越しの介は、越後の大坊主が日頃ライバル視している天目山の見越し入道の息子です。大坊主はそれが気に入らず、見越しを攻め滅ぼそうと考えました。
 家老のすすめで天竺浪人を軍師に迎えようと、まずは母親の安達婆(あだちばば)を酒宴に招きますが、婆は姑息な手段で懐柔しようとする見越しに腹をたて、鬼の形相をあらわして拒否します。
 一方、見越し入道も天竺浪人を化物極意の達人とみこんで訪ねます。浪人は本名を名乗り、見越しに味方する事を約束しました。
 こうして大坊主と見越しの合戦が始まりますが、天竺浪人の取り持ちで両家は和睦し、お六と見越しの介は晴れて夫婦の盃を交わすのでした。

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お六と見越しの介、互いに一目ぼれ
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三つ目大坊主と見越し入道の一騎打ち
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さそくの介の取り持ちで夫婦の盃を交わす二人