万物小遣帳(ばんもつこづかいちょう)
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# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。
ばんもつこづかいちょう
万物小遣帳
発行年:1796(寛政八)
作・画:十返舎一九
登場人物
主要人物が鍋と釜なのでややこしい!
荒神様
台所道具のばけものたち
割れ鍋
その妻、とじ蓋
黄金の釜、唐土より漂着した娘
銀の茶釜、黄金を見初め、身受けする
茶碗、銀の家来
文福茶釜一名とんだ茶釜、黄金に横恋慕
うどん屋のとっくり、文福茶釜の仲間
かっぱ屋のすりこぎ、同
みたおし屋、吉原の女郎屋
西方の杓子如来
火打ち石、如来のおつかい
物語
冒頭、かうしんさま(荒神様)があらわれて、所帯道具たちに倹約の大切さを説くが、物語にはあまり関係がなさそうである(本編に出てくるのは杓子如来)。
割れ鍋が品川の浜辺でもろこしの船をみつける。その船には黄金の釜(カマであるが性別は女性と原文に有る)が載っており「自分は唐土(もろこし)の郭巨が掘り出した釜であるが、船遊びの途中で難風に合いここに漂着した。唐土へ返してほしい」と頼むが、破れ鍋には言葉が通じず、適当に返事をして家に連れ帰る。
破れ鍋は黄金の釜に日本風の振り袖を着せて吉原に女郎として売りつけるつもりでかくまっていた。妻のとじ蓋が悋気(焼き餅)をおこして夫婦げんかが始まるが、同じ長屋に住むすり鉢になだめられ、どうにか収まる。
黄金の釜は吉原へ売られてしまうが、それを見た銀の茶釜が見初め、吉原に通い詰め、ついには身受けすることに。
同じく黄金に入れ込んでいた文福茶釜はならず者を仲間に引き入れて黄金を誘拐して逃げるが、黄金が銀に心中立てしてなびかないので腹をたて、両国川で殺してしまおうとする。
銀の家来である茶碗は黄金の行方を探す。文福が黄金を殺そうとしているのを見て千両で買い取りたいと持ちかけ、なんとか救い出す。
文福は家に帰り、茶碗から受けとった千両の入ったお歯黒壷を開けてみると中身は消し炭で、煙のようなものが立ち上ったかと思うと、文福茶釜はやかんになってしまった。
そこへ西方の杓子如来が現れて、文福茶釜は黄金の釜をさらった罪で狸に戻ったのだと告げる。やかんは狸の金玉の形なのですなわち狸であると。しかし貧しさからではなく、恋ゆへの盗みであるから大罪ではない。若気の至りとしてやかん親父とした。若さを失ったのは二度と罪をおかさぬようにとの方便である。この言葉をゆめゆめ疑うことなかれ。そう言って杓子如来は姿を消す。
やかん親父となっても腹立ちがおさまらない文福は、銀の茶釜のところへ女をかえせと怒鳴り込んで暴れる。銀の茶釜はやかんの頭に紐をつけて砂利の上を引きずり回してこらしめる。
また破れ鍋も黄金が銀に受け出されたと聞いてねちねちいゝに来る。そこで茶碗は破れ鍋をおさえつけて頭の中で藁を燃やす。これにより破れ鍋は金気(金属の渋)が出なくなり、本当の鍋になり心を入れ替えた。
こうして騒動はおさまるが、杓子如来は銀の茶釜にも倹約の大切さを説く。