@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

化物太平記(ばけものたいへいき)

https://honkoku.org/app/#/transcription/378898260518DFD4CA39718F7ECD3BB3/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

ばけものたいへいき
化物太平記
発行年:1804年(享保四)
作・画:十返舎一九

登場人物

十返舎一九、作者本人
見越し入道
小蛇
河童
遠州松がうらの狐
やまかがし
なめくじりの大将
猫又のみけの
胸気者の狸

物語

 武者尽くしを蛙と蛇とナメクジの化物尽くしで書いてほしいと版元に言われ、原稿料も上がったことなので喜んで引き受けたもののアイデアが出ない。夢で蛙以下の三虫を見て化物尽くしならぬ虫尽くしで書こうと考える。

 そこへ見越し入道が現れて、せっかく版元は化物尽くしと言っているし、去年は化物が大当たりしたので今年もやらかしてほしいと言い、強引に蛙と蛇とナメクジが出てくる化物による太平記が始まる。

 三河の岡崎に歳を経た河童がいて、様々に化けては人を切り殺して強盗を働いて暮らしていた。ある日、橋の上で小蛇の尻尾を踏んでしまい、あやまりもせず通り過ぎようとすると、小蛇が猛然と抗議してきたので、見どころがあるやつと思い仲間に加える。

 河童は小蛇を連れ帰り召し使うが、非常に賢く末頼もしい小蛇だったので、ある日その智恵を試そうと、河童は自分の尻子玉をとってみろと言う。小蛇は時々庭で物音を立てるなどして夜通し河童を寝かさず、夜が明けて気がゆるんだ頃、居眠りをする河童から見事に尻子玉を抜く。この日が二十八日だった事から、今の人が「尻まくり御用心、今日は二十八日」と言うようになった(二十八日はツケの集金日)。

 小蛇は遠州松がうらの狐に奉公するが、狐が化けるのにかぶるしゃれこうべが壊れたので武州鈴ヶ森で調達してきてほしいと、木の葉の小判六両を渡される。

 小蛇はこれ幸いと狐の小判六両を持ち逃げしようとするが木の葉の小判なので意味がなかった。またよい運もあろうと都の方へ行く途中でヤマカガシという蛇に会い「貴殿には青龍の相がでておる」などと将来の成功を予言される。

 尾張国の清須に無間の鐘をつく者を責めさいなむナメクジリの親玉がいて、国の出口に関所をつくり往来の僧侶を捕まえては牢につないでいた。仏事の時だけ牢から出して先祖供養をさせていた。またナメクジリの大将は威風を好むのでろくろ首の集団を長柄の槍に見立てて二行に行列させて打ち通る。

 なめくじりが小巻山の樹木を数えよと言うので、仲間の蛇を集めて一本ずつに巻き付けて、残った蛇を数えて樹木の数を算出する。こうして小蛇は普請奉行に出世、三日のうちに城を普請しましょうと請け合う。小蛇は三日で完成させるつもりで油断なく大工を手配して、夜は狐火で照らしながら城を普請する。

 狸は蛇の成功を妬み、佐屋川合戦のおりに猫又が陣中に持ち込んでなくした割笄を、新参者の蛇が取ったに違いないとなめくじりの大将に告げ口する。あらぬ疑いをかけられて、小蛇は質屋へ行き、これこれの笄を売りに来る者があれば知らせてほしいと頼む。果たして足軽風の男が売り気に来たので捕まえてなめくじりに報告すると、証拠もなく人を疑った猫又は叱られ、小蛇は加増され出世する。また佐屋川の合戦ではかりごとをめぐらし敵を追い下す。これにより小蛇は軍使に出世する。

 ここで前編が終わるが、後編が出る前に十返舎一九が手鎖の刑に処せられたため、後編は発売禁止となる。ベストセラーだった『絵本太平記』が発禁になった事から、一九の本はその翻案とみなされたとも言われる。また挿し絵に豊臣家の家紋である五七の桐のような絵を書いた事も理由とされる。

メモ

  • なんでものみこみ山(語尾に山をつける洒落)
  • なめくじり、きめくじり、ナメクジのこと。
  • かいる、蛙のこと。
  • こいつは一番あやまった稲荷町(こいつは一番あやまったり、と言うところを語尾をもじって稲荷町とする洒落か)
  • 龍は三寸にしてその気をなす
  • 蛇を使う、のらくらする、怠ける。
    • へらを使う、塗ったりはがしたりする事から、どちらにでも都合がいいように曖昧な態度をとること。
  • しりまくり御ようじんけふは廿八日、月末に掛け取りが来るので尻をまくって逃げる者がいるので気をつけろということ。
  • 酒を買って尻を切られる、酒をおごってやった上に酔っぱらって尻を切られる→割りにあわない、という諺。
  • しめこの兎、しめしめ、という意味。しめこ(占子)は兎のこと。
  • おそろかんしん(恐感心)、恐れいった、感心したという意味の通人言葉。
  • ふとじるし(太印)、太え奴だ。
  • 蒲焼きにして茶づる
  • せしめうるし(瀬〆漆)、ウルシの木からかきとって精製する前の漆。また、せしめるの洒落。
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五七の桐らしきものが描かれたシーン