場戯嘉話古手返/紺屋百物語
▼場戯嘉話古手返
https://honkoku.org/app/#/transcription/E294C8CFA43937EC381C1C2B9D19351D/1/
▼紺屋百物語
https://honkoku.org/app/#/transcription/4D2CCE087578E0A4D21182AFBFA7E940/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。タイトルは違いますが、中身は同じ本です。翻刻は『今夜百物語』のほうでやってます。
こんやひゃくものがたり
紺屋百物語
発行年:1786(天明六)
ばけのかわこてがえし
場戯嘉話古手返
発行年:1794(寛政六)
作・画:古阿三蝶(こあみ ちょう)
中身は同じ本なんですが、国会図書館には別のタイトルで所蔵されていて、なおかつ発行年も違っています。板を改めて出直したのか、単純に何かの間違いなのか、ちょっとわかりません。序文には場戯嘉話古手返というタイトルの説明が書いてあるので、もともとのタイトルは『場戯嘉話古手返』なのではないかと思われます。
登場人物
狐たち
人間たち
物語
ばけもの人気が下火になっているこの頃、何か新しい化け方を考えようと狐たちが寄り合いをして、お金を持ってきた人を注文通りに化かしてやる夢のある商売を考えつく。
- 樽拾い(丁稚奉公のこと)
- 十二文で女郎遊び。
- おりんどの(武家の女中?)
- 五十文で紋付け(というギャンブル)で大当たり。
- 折助(武家の下僕)風の男
- 二十四文で街をぶらつき、湯に入り、買い食い。
- 按摩鍼の療治
- 十六文で芝居を一幕。
- お所化(修業中の僧侶)
- 檀家から着服した一分で好き放題。
- 番頭
- 一分で深川の女郎を買う。
- 吝い奴(けちな奴)
- 二分で芸者を連れて高慢に洒落る。
- 怪力乱神の侍
- 今まで恐い目にあったことがないので百分で恐怖体験。
- 隠居
- 老後のために貯めた金一両で千両富くじ大当たり(千両は嵐で海に捨てる)。
- 隠居の女房
- 千両が惜しいので五十文で海を干上がらせる。
- 奥女中
- 五両ですごいイケメンと縁談。
- 醜男二人
- 十両で女郎に大モテ。
- よき暮らしの町人
- 金貸しの福徳屋
- 倍になって帰ってくるなら金貸しより得だと、手代や番頭に千両づつもたせて狐に化かされる。
これらの人々は、かならずしも思い通りにはなっていないが、ほぼ害もなく(按摩さんのみ狐を馬鹿にしたバチが当たっているが)、それぞれ倍の楽しみを得ている。福徳屋については、狐たちが割りにあわないと音を上げ、九郎介稲荷が出てきて「みなが借りた金を返すなら必ず繁盛させてやる」と約束し、福徳屋も得をして、借金取りに終われる生活の者たちも相応の暮らしができるようになった、というところで話が終わっている。
メモ
# 注意:値段のたぐいは化かし代である可能性があり、当時の物価を反映しているとはかぎりません。
- 作者の古阿三蝶は小網町に住んでいたことに由来する。読みは「こあみ ちょう」
- きつねばさば〳〵(不詳。狐が逃げ出したと思われるシーンに出てくる)
- 近年廃れたもの(つまりちょっと前に流行ったもの)
- 大名縞
- 七宝
- ぼつとりもの(ぼっとり者。まだ世慣れしていない若くかわいらしい娘。ふっくらした愛嬌のあ人)
- 五十蔵(一切り五十文の私娼)
- コウ(斯うっと。ええと。すぐに判断しかねて考えるときに発する語)
- 四つ紅葉のかんざし
- とびいろびろうどの腰帯
- もんづけ(さまざまな紋が描かれた紙を使った賭け事)
- 梅川・忠兵衛(飛脚宿の忠兵衛が遊女の梅川を受け出す金に困り店の金を使い込んで処刑されるという情話)。
- 路考・杜若(瀬川菊之丞と岩井半四郎のこと。女形役者)
- 新狂言
- 二朱で買えるもの
- 仏棚
- 鰻に二百文
- 酒五合
- 裏付け草履を四百文で買う
- 素見(女郎屋を冷やかしてまわるだけで登楼しない者のこと)
- 料理
- うなぎの蒲焼き
- 十二文でとうもろこしのつけやき
- 八文で湯に入る
- 一文で鰻を一匹放生する
- 三文で飴を買い食いする
- 谷風と小野川の相撲
- 二人の取り組みなら二百五十分はすると書いてある。
- 1両=4分なのでとんでもない金額になりそうだけど…?
- 二人の取り組みなら二百五十分はすると書いてある。
- 千両の富くじで何を買ったか
- 百両を奉納金にする。
- 残り九百両で
- 金無垢の阿弥陀仏
- 水晶の数珠
- 旦那寺へ納める釣り鐘
- ソレよしか
- 見越し入道は何かの理由で呼ばれなかったと書いてあるので、当時ばけものの話と言えば見越しが出ないとっていうくらい、見越し入道がメジャーでお約束の存在だったということがわかる。