@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

化物通人寝言(ばけものつうじんねごと)

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ばけものつうじんねごと
化物通人寝言

発行年:1782(天明二)
画・作:北尾政美

登場人物

塩屋
きまり
点者(半面美人)
日本(?)
芝居の台本
ありがたい(?)
百員(百韻?)
…など、大通が使った言葉や、大通に好まれた遊びに関する言葉などが化けて人のように手足を持った状態で登場する。

物語

 世の中が大通の時代になって、ばけもの草紙も見越しや一つ眼じゃお子様方も納得しないので新しいばけかたをしなければと相談のために寄り集まったのはなんと擬人化された大通言葉の精たちだった。

 言葉たちは思い思いの遊びをしてみたいと、当時流行りだった俳句の採点ゲーム(ほぼ博打化してたらしい)やら、買い物をするやらさまざましているうちに金がなくなり、普通の金貸しは怪しんで貸してくれないから座頭金を借りることにする(座頭さんは目が不自由なので)。

 その金でさらにめくりカルタをして、借金も返すあてもなく、仕方ないので野暮に乗り移って家を抵当にして金を借りさせようとしているところへ御幣の姿で現れた神によって言葉たちは吹き殺されてしまう。金もかせげない大通なんかより野暮のほうがよっぽどいい、と終わる。

メモ

  • 大通(だいつう)、通人(つうじん)、吉原などでの遊女遊びの通のこと。
  • 点、ここでは俳句の採点のこと。俳句などの採点をする免許を持った先生(点者)がいて、自分の作品を持って行って見てもらうが、江戸時代中期には完全に点取りゲーム化しており、何先生はこういう題が好きというようなガイドブックまで存在していたそうだ。
    • 半面美人、上記の俳句の採点で、其角(きかく、俳人)の合格印のようなものが半面美人で高得点だったとされる。
  • 塩屋(しおや)、高慢、自惚れ、自慢、豪語などを意味する流行語。深川に誇大妄想の塩売りがいたからという説と、京都の塩売りの行動からきたという説がある。
  • きまり(極まり)、吉原や岡場所で客と女郎が恋仲になること。
  • ひと世界なり山検校
    • 世界、歌舞伎用語で狂言の趣向のこと。転じて、遊び、事情、思惑、状態などを言う。
    • なり山、〜也に山をつけた言葉遊びで当時の通人の流行り言葉だった。
    • 米山検校、盲人で鍼治療で財をなした有名な座頭。
  • めくり(めくりカルタ)
  • ちゃん(銭のこと。宋音)
  • 三囲裏門、三囲神社の後ろにある鳥居のことか。
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大通の言葉が化けて思いのままに遊ぼうとする