地獄沙汰金次第(じごくのさたもかねしだい)
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# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。あまり状態のよくない本で読むのに苦労しましたが、ストーリーがわかる程度には翻刻できてると思います。
じごくのさたもかねしだい
地獄沙汰金次第
発行年:1782年(天明二)
作:伊庭可笑
画:鳥居清長
登場人物
物語
閻魔といえば恐ろしい顔をして死者の悪行を見抜く地獄の裁判官だが、それは昔のことで今ではすっかり通人ぶってうまい菓子をかじりながら地獄草紙など読んで楽しんでいる。月のうち十六日だけは縁日なので、その日だけは真面目に勤めているようだ。
ある日、娑婆(現世、この世)から小林朝比奈が年始にやってくる。年始といっても挨拶するのはむしろ地獄のほうで、朝比奈は言いたい放題やりたい放題。閻魔は自分が出るとこじれるからと仮病をつかって十王と鬼たちに接待させる。朝比奈は閻魔が病気なら治るまで何年でも待つといって帰ろうとしない。それどころか馳走しろ、酒をよこせ、地獄の酒は不味いから娑婆にとりに行けと言う始末。
そこで十王たちは相談して、娑婆の酒だといつわり、地獄の酒に毒を混ぜて朝比奈にすすめる。朝比奈は娑婆から持ってきたにしては出てくるのが早いと怪しみ、近くにいた赤鬼を捕まえて無理矢理酒を飲ませる。苦しみはじめる赤鬼。
怒った朝比奈は牛頭・馬頭・その他の鬼たちを縛り上げ舌を抜いてしまう。十王は慌てて閻魔に報告。閻魔は地蔵菩薩に仲裁を頼み朝比奈と会うことにする。
朝比奈はさらに暴れる。三途川の婆を呼び「お前はせっかく着せてある罪人の着物をはぎとっているな。その罪は重いぞ。業の秤にのせてみろ」と鬼たちに命じて罪の重さをはかる天秤にかけ、婆を剣の山に送ろうとする。朝比奈が恐くて言うことをきくしかない婆。
閻魔は少し病気がよくなったからと地蔵を立会人にして朝比奈と対面する。朝比奈は「誰の許しで王をやってる」「絹の服などけしからん」「鬼共のフンドシは紺の木綿で十分。虎革は俺が土産にする」「みるめかぐはなの台が贅沢すぎる」などと難癖をつけ、言うことを聞くなら命はたすけると言う。
閻魔はすべて言う通りにして、死者から奪い取った六文銭(三途川の渡し賃として死者に持たせるお金)を出してきて、ここに千両あまりございます。これを持ってお帰りくださいと頼む。
朝比奈は、浄玻璃の鏡、閻魔の衣類と冠、虎革のフンドシ、鉄の棒(金棒)、業の秤など、地獄の道具をすっかり取り上げ、しまいには地蔵にも「今後地獄が驕るようならお前の錫杖と宝珠もとりあげるぞ」と言い放ち、千両箱をかついで娑婆に帰って行く。
朝比奈のようなヒーローが地獄で壊した諸道具を直す話に『大磯地蔵咄』がありますが、そちらでは「朝比奈、弁慶、金時が」と言っているのに対し、この本には朝比奈しか出てきません。また文体がかなり違うので、直接の続編ではないような気がします。
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- とらのとし新版目録/永寿堂・西村屋與八版