@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

鎌田又八(かまだまたはち)

https://honkoku.org/app/#/transcription/052E62E165515E2FC275178EAB84D4C3/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

かまだまたはち
鎌田又八

発行年:不明(江戸中期)
作:不明(富川本人か?)
画:富川房信

登場人物

鎌田又八、怪力の持ち主
又八の乳母
三つ目大入道、又八を襲う
見越し入道(挿し絵のみ)
又八のおば(実は妖怪が化けたもの)
一つ目小僧
きぬや嘉右衛門
その娘おしが
嘉右衛門の老婆(実は猫が化けたもの)

物語

 鎌田又八という怪力で近国に知られた者がいた。彼は鶏をかわいがっていたが、遊びに出かけている間に隣家の犬に食い殺されてしまう。又八の乳母や近所の子供が犬を追うが捕まらない。そこへ帰ってきた又八は犬をみつけ、あっさり捕まえると下あごに手をかけてやすやすと引き裂いてしまった。

 ある日、又八は一里ばかり離れた山里のおばに会いに行く。途中で三つ目大坊主に襲われるがあっさり撃退する。正体は古狸だった。おばの家にたどりつき、気が緩んで眠くなる又八。夜中に物音に目覚めると、巨大な山伏が舌なめずりしている。いろりのほうでは一つ目小僧が人間の手を焼いて食べているし、おばだと思っていたのは口が耳までさけた鬼婆だった。妖怪たちは又八が眠っているものと思って襲いかかる。又八は待ってましたとばかりに刀を抜いてこれを退治する。

 さて、きぬや嘉右衛門という有徳な商人がいて、猫を飼っていたが、その猫が化けて嘉右衛門の老母を食い殺し、老母になりすましていた。きぬやの前を通りかかった又八は口を血で汚した老母が高塀を乗り越えていくのを目撃する。急ぎきぬやを訪ね「もしや猫をお飼いではありませんか」と言えば「しばらく前から姿が見えないのです」と。

 猫が姿を消した頃から隠居中の母親が目をわずらい、明るいところを嫌って引きこもっているという。そこで隠居所の庭を掘ってみると、老母とその世話をしていた女中の死骸が出てきた。さらに隠居所の様子をうかがえば、猫は正体を現しニャアニャア言いながら食事を頬張っている。やはり猫の仕業だったかと納得するきぬや。化け猫を見て恐れるきぬやの娘、おしが。

 突然空がくもり大雨大風が吹き荒れる。又八はきぬやに頼まれて化け猫を退治する。肝の太い若い者が自分も化け猫を討ち取るのだとやってきたがこの様子を見て気を失う。

 こうして化け猫は退治され、きぬやは又八に娘のおしがと妹背の仲をたのむ。おしがも又八に恋い焦がれていたので夫婦になれたことを喜ぶ。くたびれ休めに酒を飲もうと又八が大盃を手にすると、そこに化け猫の姿がありありと映る。見上げれば化け猫の生首が。又八はこれを睨み落とし、それからは不思議なことは起こらなくなった。

 こうして又八の評判はいよいよたかまり、おしがとふたりで幸せに暮らした。力試しに春駒を担ぎ上げる又八。それを見て幸せをかみしめるおしが。めでたしめでたし。

メモ

  • みじんこっぱい、微塵骨灰。こっぱみじんと同じ。
  • はめ印、語尾に印を付ける言葉遊び。はめは「羽目に陥る」などという時の羽目で、ピンチになったくらいの意味か。例:きついやつにでやつてははけものもはめ印
  • 三つ目大入道や見越し入道も登場するがちょい役で、化物の相座頭のような設定はない。
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鶏をころした犬を引き裂く又八(右)、又八を襲う三つ目大入道(左)