@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

歌の化物一寺再興(うたのばけものひとでらさいこう)

https://honkoku.org/app/#/transcription/490E9B849C29904B36E421EEAB061707/1/?ref=%2F
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

うたのばけものひとでらさいこう
歌の化物一寺再興

発行年:1793(寛政五)
作:不明
画:勝川春英

登場人物

常うん、いんちき僧侶
旅の禅僧
庄屋
村人たち
寺に執着する先代の住職(ばけもの)
その他ばけものたち

物語

 もり村というところに古寺があり、ばけものの住み処になっている。新しい住職を呼んできてもみな逃げ帰ってしまう。常うん(じょううん)という僧侶が、いたずら者たちを集めて寺に泊まり込んだ。夜になると振り袖で一つ眼のばけものが出てきて「こよいの月はそらにこそすめ」と歌の下の句だけを詠んだが、常うんがふざけて「名月や下では団子食ろうなり」と詠むと、ばけものが暴れ出したので、常うんたちは命からがら逃げ出した。

 そこへ旅の禅僧が現れて、そういうことならその古寺へ案内してほしいと言う。村人はどうせこの僧侶も朝までに逃げ出すに違いないと思いながらも寺へ案内する。夜になり、ばけものたちが様々に化け始めたが、禅僧は坐禅をくんで動じなかった。

 やがてばけものたちは寄り集まって歌会を始める。上座には先代の住職とおぼしき僧侶のばけものがいて、
「今宵の発句はいかがありしぞ」
と言い、末座にいた小姓姿のばけものが
「今宵の月は空にこそすめ」
と、例の下の句を詠んだ。
 それを聞いた禅僧は
「影うつる水は氷に閉ぢられて」
と、上の句を詠んだところ、ばけものたちは即座に成仏して消えていった。

 翌朝、村人たちが古寺へやってきて、禅僧が無事だったことを知り驚いた。これは本当に悟りを開いたお方に違いないと、禅僧を古寺の住職に迎え、近隣の村々で寄り合って寺を再興したという。

メモ

  • 歌詠みの妖怪という昔話の類話
  • 村人が北関東っぽい田舎言葉で話している
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禅僧の前でばけものたちが歌会を始めるシーン