@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

大昔化物双紙(おおむかしばけものぞうし)

https://honkoku.org/app/#/transcription/4B5A859D5566995808D7844291EF99C8/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

おおむかしばけものぞうし
大昔化物双紙
発行年:1792(寛政四)または1795(寛政七)
作:桜川慈悲成
画:歌川豊国
# 国会図書館には同じ本が三冊あり、1795(寛政七)年で登録されているが、そのうち一冊に寛政四と書き込みがある。

登場人物

越後の大入道
その息子の一つ目小僧(元・豆腐小僧/今入道)
ながくび屋お六、ばけもの里遊女
おおさむ屋ゆきの夜、同遊女
しんやの毛女郎、同遊女
もろこしの化物(トウモロコシ)、郭の素見客
すいかの化物、同
見越し入道、狒狒の養子
坂田金時

物語

 越後の大入道は隠居して息子の一つ目小僧に頭の座を譲ることにした。その際、自分の目をひとつ抜いて小僧に与えた。

 もともと小僧は柳の下から豆腐を持って(豆腐小僧のなりで)人をおどかしていたが、父親と同じように立派に化けたいと思い、童子格子の大どてらを着て金棒をついて諸国化け修業に出かけた。これより小僧は今入道となる。

 化物里という化物が集まる郭(くるわ、遊里)で修業することにした今入道は遊女の毛女郎を見初める。しかし見越し入道も毛女郎に言い寄っており、小競り合いに。毛女郎はふたりをとりなし刀を収めさせ、今入道をしんやの二階へつれていく。今入道は心中として親からもらった片目をくり貫いて毛女郎に与える。

 見越し入道の養父である狒狒は、息子が今入道にへこまされたと聞き腹を立て、毛女郎をあげぞめ(貸し切りのような状態)にする。毛女郎はあわてて今入道をかくまう。それを知ってか知らずか狒狒は今入道をさんざんに悪く言う。隠れて聞いている今入道に決して出るなと言う毛女郎。しかしとうとう狒狒にみつかり、豆腐小僧のかっこうで郭の出口にある柳の下に追い出される。

 かくなる上は一緒に死のうと毛女郎は郭を抜け今入道のあとを追う。一方、古入道(父・越後の大入道)は息子が行方不明と聞き探しに出かけ、とうとうめぐり合う。そこで古入道は残った片目も息子に与え、毛女郎は心中にもらった片目を返し、今入道は越後の三つ目大入道となる。

 こうして新しい化物の頭が誕生するが、坂田金時は三つ目入道がまだ若年なので、いずれ相対することもあろうと悠然とめでたき春を迎えた。

メモ

  • ばけものの頭は越後の大入道(三つ目設定はなく、子に目をゆずって一つ目になる)
  • 息子は一つ目の豆腐小僧(親から目をもらい二つ目になる)
  • ももんじぃ(妖怪が人をこわがらせる時のかけごえ)
  • 心中(ここでは愛の証として体の一分を切り取って相手に与えること)
  • ちょろけん小僧(福禄寿の張りぼてを着た子供の見せ物)
  • 寒念仏(乞食坊主、物乞い)
  • かつはち入道ほととぎす(加牟波理入道ほととぎす)
  • 長音記号として使われている「引」

 化物の頭は「越後の三つ目大坊主(入道)」か「見越し入道」という設定が大多数で、この物語はお馴染みの三つ目大坊主の誕生秘話になっている。

  • 父親の古入道は二つ目→息子に目をやって一つ目→残りもやってしまい目がなくなる
  • 息子の豆腐小僧は一つ目→父から目をもらい二つ目→毛女郎に目をやって一つ目→毛女郎から目を返してもらい、父からもうひとつ目をもらって三つ目

 今入道も古入道も首が長いという設定は出てこないが、見越し入道との小競り合いのあと、絵師の歌川豊国が混乱しているのか今入道の首を長く描いている。

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今入道に目を与えた古入道と毛女郎(右)、越後の三つ目入道の誕生(左)


以下は翻刻中にツイートしたもののまとめ。
togetter.com