@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

年中行状記(ねんじゅうぎょうじょうき)

https://honkoku.org/app/#/transcription/9C916805C59753203016BE7FE426D8A3/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

ねんじゅうぎょうじょうき
年中行状記

発行年:1796(寛政八)
作・画:十遍斎一九(十返舎一九

物語

 ばけものの一年の行事を描く。

  • 正月
    • 人間ならば「ものもう(物申す)」「どうれー」というところだが、ばけものならば夜中に知人を訪ね「ももんぐわぁ」と言う。すると中から「どうれー」と言いながら出てくる。そこで「ばけまして良い春でござります」と挨拶する。
  • 春先の遊び(二月)
    • ろくろ首の子は自分の頭で凧あげをする。首を引っ張って走り、首の伸ばし方を覚える。
    • 女の子は手まりのかわりに火の玉をついて遊ぶ。
  • 三月
    • 思い思いの雛にばける。
  • 四月
    • 見越し入道は四月八日の生まれ。見越しは首が長いので、頭から生まれると粗相な産婆が首を飴のように引きちぎってしまうため足から生まれる。そのためおさかさまと呼ばれている。
  • 五月
    • 鬼が鍾馗をおっかける図や、金時・金平が熊においかけられる図を幟に描く。
    • こいのぼりではなく、うわばみの吹き抜きをあげる。
  • 六月
    • 狐は馬の骨などを涼み舟に売りに行き大もうけする。
    • 花火を商うたまや・かぎやがいる(たぶん打ち上げるのは人魂)
  • 七月
    • 死んだばけものが幽霊になって地獄から帰ってくるが、ばけものの世界では幽霊はこわくもなんともないので、子供は喜んで土産をくれとねだる。
    • 人間などよりしおらしく、幽霊になって戻ってきた家族と団欒を楽しむ。
  • 八月
    • ばけものの世界にも吉原のような遊廓がある。幽霊や雪女の女郎たちは普段から白装束なので八朔に黒小袖を着る。
  • 九月
    • 千年歳をへた狐が蘭菊に遊ぶという故事からばけものの世界でも九月には長寿を喜ぶ。
  • 十月
    • えびす講で勧進大相撲、十夜の間日暮れとともに始まる。
  • お芝居の顔見世興行(十一月)
    • みな自由に化けるのでおしろいもいらない。
  • 十二月(極月)
    • ばけものは正直者なので滞りなく支払いを済ませる。
    • ばけものに

メモ

  • 引を長音記号として使っている(たぶん)
  • さきに稲荷(さきにいるなり→稲荷、と続ける洒落)
  • しらきちょうめん(白几帳面。清廉潔白であること。明白、ありのまま)
  • もちまる(持丸長者の略。大金持ちのこと)
  • 路考・杜若(瀬川菊之丞岩井半四郎のこと。女形役者)
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春先、ろくろ首の子供が自分の首でたこ揚げをする図