大磯地蔵咄(おおいそじぞうばなし)
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# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。状態はそう悪くもなく、ストーリーもおおむねわかるんですが、聞きなれない言い回しが多く、細かい点で読めた気がせずなんとなくモヤッとしています。
おおいそじぞうばなし
大磯地蔵咄(大磯地蔵話)
発行年:不明
作:不明
画:不明
作・画とも不明、発行年も不明。これはあくまで個人的な考察で、あてずっぽうの類いですが、絵のタッチが富川房信に似てるような気がします。だとすれば年代は1760〜70年代にかけて。ただし、房信が古くさいタッチを愛して真似てる可能性もあるので断言はできません。
登場人物
物語
小林朝比奈、弁慶、金時が地獄で暴れて地獄の道具を踏み壊していった後の物語。
地獄とはいえ道具をこしらえ直すには現金がいるので、閻魔、六道の地蔵、九せうじん(不詳)、鬼が寄り集まって相談する。まずは被害を見聞に行くと、無間の釜は割れ、業の秤もこわれてしまい、浄玻璃の鏡は割れ、みるめかぐはながのる台も折れている。
これらの道具を再興するため、六道の地蔵は大磯の石地蔵に金を貸してくれという。大磯の地蔵は仕方なく狸、狐、狢を集めて旅人から金品を奪う相談をする。獣たちはそれぞれ化けて旅人をおどし金を奪い地獄から集金に来た鬼に渡す。狐が見越し入道にばけて飛脚を襲うが逆につかまりそうになる。あわてて逃げ出し石地蔵の後ろへ隠れるが、飛脚は刀で地蔵を切りつける。石地蔵は袈裟斬りに割れてしまう。
獣たちが地蔵を地獄に運ぶ。九しょうじんや三途川原の婆がお見舞いにくる。閻魔たちが呼んでくれた医者が石漆というものでくっつけて治す。集めたお金で地獄の諸道具を作り直し、嬉しさのあまり踊りの音頭をとる閻魔大王。踊り始める鬼たちや九しょうじん。
その後、大磯の石地蔵はお堂にまつられ、道行く人の参詣を集めたという。
ばけもの退治のヒーローが地獄に乗り込む話には『地獄沙汰金次第』というのがありますが、それには朝比奈しか出てきません。
asobe.hateblo.jp
メモ
- 獣たちが化けたもの
- 虎が石:全国にあるそうだが、大磯のものを言っているだろうか。持ち上げようとしている旅人が、「大磯の虎が石になったという事だ」と言っている。ネット上で流布している大磯の伝説は虎御前誕生にかかわる石で、虎自信が石になったとは言われていない。
- ひとつ目小僧
- 狸が金玉をひろげて旅人にかぶせる
- 狢女中:詳細は不明だが、女中(女性)にばけて往来の人を呼び止めて化かすものだろう。狢が言う「おじゃれおじゃれとまらんせ」が決まり文句だったかもしれない。
- 累(かさね):狢女中は化け方が下手で美女に見えなかった。旅人は累が出たといって驚いている。累が淵の累は醜い容姿ゆえ夫に殺されて祟りをなした女性の名前。祐天上人に供養された。
- 見越し入道:長い首を伸ばして上から見下ろしておどす妖怪だが、正体は古狸や狐であるとする話が時々ある。この本では山こしの坊さんとも書かれており、山を越えて首を出している。
- 同じ場所を何度も歩かせる:飛脚は平塚から大磯までのたった二十七丁のみちのりで日が暮れたと言っている。
- 地獄の道具
- むけんのかま(無間の釜):罪のある死者を釜ゆでにする。
- ごうのはかり(業の秤):死者の罪の重さをはかる天秤。
- でうはりのかゞみ(浄玻璃の鏡):じょうはりのかがみ。死者の生前の行いを映す。
- みるめかぐはなの台:燭台のようなもの。