@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

化物山入剛屋敷(ばけものやまいりつわものやしき)

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# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。本の状態が悪く、非常に読みにくくなっています。


ばけものやまいりつわものやしき
化物山入剛屋敷
発行年:不明(江戸中期)
作:富川吟雪(富川房信)
画:不明(吟雪本人か?)

登場人物

見越し入道、医師(あるいは鍼灸師)。俳諧茶の湯などをたしなむ通人。
きつね、発句合わせの仲間。つわもの屋敷へ行くが助かる。
河童、発句合わせの主催者。
天狗、武者修行の旅の途中。友人が弁慶にさらわれ、つわもの屋敷へ助けに行って死ぬ。
土蜘蛛、天狗の友。雪女とともに弁慶にさらわれる。
雪女、土蜘蛛の妻?茶道花道の師匠かもしれない。弁慶にさらわれる。
うわばみ、発句合わせの仲間。天狗、きつねとともにつわもの屋敷で死ぬ。
猫又、発句合わせの仲間。
たぬき、同。
鬼、きつねの病気見舞いにくる。
狒狒、同。
山姥、ばけもの仲間ではあるが、坂田金時の母親でもある。

武蔵坊弁慶、おそろしいつわもの。土蜘蛛と雪女をさらう。
鎮西八郎為朝、おそろしいつわもの。つわもの屋敷にて天狗たちを迎え撃つ。
渡辺綱、おそろしいつわもの。
金時、同。
朝比奈、同。

物語

 見越し入道は雪女のところで薄茶をたしなむ予定だったが、河童から発句合わせ(句会)の誘いが来たのでそちらへ向かう。きつねと同道する。

 天狗は武者修行の帰りに土蜘蛛の家に立ち寄る。土蜘蛛、雪女、天狗の三人が連れ立っているところへ武蔵坊弁慶が現れ、土蜘蛛と雪女をさらっていく。

 河童たちの発句合わせの会場に天狗が現れて、土蜘蛛と雪女がさらわれたと言う。

 天狗、うわばみ、きつねの三人が誘拐された二人を助けにつわもの屋敷へ。しかし鎮西八郎為朝と渡辺綱が現れて三人のばけものを捕らえる。天狗とうわばみはその場で殺されてしまうが、きつねだけが見せしめとして命をゆるされ、雪女の筒切り、うわばみの蒲焼き、天狗の味噌吸い物などおそろしい料理を無理に食べさせられる。

 きつねは逃げ帰り、食べ過ぎで具合が悪くなり見越し入道に往診を頼む。そこへ狒狒と鬼が見舞いにやってくる。このままほうってもおかれないので、残ったばけもの(きつね、見越し入道、たぬき、河童、猫又、狒狒、鬼)七人が山伏に身をやつしてつわもの屋敷へ。

 ばけものたちが酒を持ってきたので、つわものたちは「本来なら殺してしまうところだが以後悪さをしないなら許す」と言って酒盛りを始める。(このあたり読めない部分が多く詳細がわからないが)酔いつぶれたつわものを倒す予定だったようだが、逆にばけものたちが懲らしめられ、あわや殺されそうになる。

 そこへ金時(金太郎)の母親である山姥が現れ命ごいをする。母親の頼みであるなら仕方ないと命はたすけられ、ばけものたちは西の海へと去って行く。

 弁慶以下の人間のつわものたちは、本来ならば悪者をやっつけるヒーローだが、ここではばけものたちを脅かす恐ろしい存在として描かれている。人間がばけものやしきへ肝試しに行くようにつわもの屋敷に出かけてつわものたちにやっつけられられる。

メモ

  • 見越し入道は出てくるが、主人公的役割ではないし、妖怪の頭でもない。
  • なにかはもってたまるべき
  • 西の海、妖怪たちが去って行くどこか遠いところ。筑羅が沖(ちくらがおき)。箱根の先とも近いニュアンスだがそれより遠くの何処か。
  • 金札、辞典によれば閻魔の庁で善人の名前を書いて極楽へ送るための札とのことだが、ここでは妖怪たちがつわもの屋敷に行く際に手にしている。目的はよくわからないが、到達したという証拠のために立てようとしているかもしれない(肝試しで一番奥に証拠として置いてくる品のようなものか)。
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つわもの屋敷へ到着した天狗、きつね、うわばみ。手には金札。