@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

大時代唐土化物(おおじだいからのばけもの)

https://honkoku.org/app/#/transcription/4DF8B9D054DB1B4A06AFDF611085E368/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。このリンク先にあるものは前半が大時代唐土化物で、後半に曽我太夫染という別の本が合本されています。後半は化物の話ではなさそうです。

発行年:1816(文化十三)
作:振鷺亭
画:勝川春亭

登場人物

洒落斎、戯作者
妖怪たち

  • 禿(かむろ)のばけもの、岡持ちを下げた少女で豆腐を買ってきたという。豆腐小僧の気取り。
  • 見越し入道、力士に化けて現れるが洒落斎に筆で腕を切られる。大江山の鬼の気取り。
  • あかなめこぞう、赤ら顔で子湯屋に出るとある。
  • うぶめ、粋な女姿で現れ、着物のおばけだと言う。御高祖頭巾をとると顔はお婆。

鍾馗の画像、紙に摺られたもので、紙から抜け出し市川団十郎の憤怒の相をあらわし化物たちを追い払う。
 

物語

 戯作者の洒落斎(しゃらくさい)はありきたりのばけものの物語ではなく、恐くないばけものを新しい本に出そうと思いついて考えているうちに寝てしまう。夢の中に次々と化物が現れて化けて見せるが洒落斎は平然とかまえ、大晦日だから、米と酒と味噌の化物を出してみろ、などと難題を言う。やがて夜は明けばけものたちは去って行き洒落斎は新しい本を書き上げる。

 タイトルで「唐土化物」とあるが、出てくるのは日本の化物ばかり。何か珍しい趣向をと唐土のばけものを出そうとするが、洒落斎は唐土にどんなばけものがいるのかも知らないのである。結局、最初のほうにそれらしき妖怪の挿し絵があるだけで、ほぼタイトル詐欺みたいなお話。

メモ

  • すこ(少しのこと)
  • 羅生門が詩(不明)
  • はらひ鬼箱(不明、魔よけのための何からしい)
  • めんた(女を意味するスラング
  • 縞セイラツ(縞セイラスとも。セイロン島の絹織物。それを真似た縞模様のこと)

米)

  • うづらかわの無垢(鹿皮などをいぶして鶉の羽のような模様をつけた革のこと)
  • 間着(着物と着物の間に着るもので、特に武家の女性が打ち掛け姿の時に打ち掛けの下に着たもの)
  • 流れ灌頂(ながれかんじょう。水辺に棒を四本立てて赤い布を張り、道行く人に柄杓で水をかけてもらう。出産で死んだ女性の供養のためにするもの。布の色があせると成仏できるとされている)
  • めくら縞(辞書には縦も横も紺色の糸で織った縞模様とあるが、それを本当にやるとただの無地になるはず。おそらく極めて細かい縞模様で、遠目に見ると紺一色に見えるということだろう。目暗縞とも、盲縞とも書く)
  • 童子格子(太い縞の格子模様で、間に細い縞が入る。細いしまのないやつを弁慶縞という)
  • ぽんぽんちまい(ぽんぽんちごめ。陳ね米。長く貯蔵して赤黄色になった米)
  • ぼてへ(棒手、棒手振り、担ぎ売りのこと)
  • きのきいた○○はあしをあらってひっこむじぶん(気の利いた○○は足を洗ってひっこむ時分)
  • さなせそ〳〵そこつは無用(さなせそ=そんなことはするな/そこつ は粗忽ではなく そのようなことの意味か?)
  • せきぞろほっぽう(せきぞろ=節季候。「せきぞろほっぽう」でフクロウの鳴き声を聞きなしたものではないか?)
  • かじわら、げじげじ(梶原景時のこと。曽我兄弟の仇討ちものなどお芝居に登場し、大変嫌われておりゲジゲジにたとえられる)
  • ぐわぞう(画像。絵にかいた姿。画像という言葉はこの時代からあった)
  • ゆみはま(弓破魔。破魔弓のこと)
f:id:chinjuh3:20211101203542p:plain
唐土の化物が出てくるのは本文前に挿入されたこの見開きページだけ!