@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

金太郎(きんたろう)

実況風動画
www.youtube.com
音読しながら翻刻して、おおざっぱに意味の説明をしたりしてます。1時間くらいの動画です。気長にどうぞ。

発行年:不明(江戸時代後期)
作:不明
画:不明(歌川国芳だと国会図書館のデータにはある)
版元:不明

所蔵:国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2532483/1/1

国書データベース
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100322625/
(ビューワーが違うだけで中身は国会図書館所蔵の資料です)

登場人物

快童丸(かいどうまる):金太郎のこと。後の坂田金時
その母
山の動物たち:サル、ウサギ、クマ、イノシシ等
木の葉天狗
らいこう(頼光):源頼光

物語

 昔話の金太郎。金太郎は快童丸と呼ばれている。父親はなく、母親は神とまじわり快童丸を産み、思うところあって山奥で暮らしている。快童丸は産まれた時から歯が生えており、体が大きく、怪力だった。まわりに人がいないので山の動物たちや木の葉天狗を相手に遊んで育つ。ある時、源頼光が快童丸を見て家来に所望。母親は喜び、忠義を尽くすよう教訓するとどこへともなく姿を消してしまう。頼光の家来となった快童丸は忠義と友愛を尽くして後に名を残す。

翻刻:金太郎

 動画の中で作ったものです。

コマ3

むかし〳〵みなさまおなじみの
らいくわう【頼光】の四てんわうの
一人ふるつはものゝかしら
ぶんさかたのきんときは
もといづのくにあし
がら山のさんなり【産なり】
ちゝもなくはゝは
神(しん)とまじはり
くはいたいし【懐胎し】十三月
にしてうまれつゝ
うまれいでたる
ときはをせうし
かたちおほひにして
せいちやうにしたがひ
ちからあくまでつよく

快童丸(くはひどうまる)

お子
さま
がた


太郎

いひ
給ふ

コマ4

つゞき 三四才のころ七八才の
かたちなりはゝはやま
おくをすみかとなして
こゝろにおもふこと
あり

人に
まじはらず
ゆゑにくわい
どうまるは
ひゞにとも
とするは
しか
さる
くまや
うさぎなど
あそびあいてと
したりける
あるとき金
太郎はおの
がちから
をため
さんとて
かたはらの
大ばんじやくを【大盤石を】
ひきおこしひと
こゑやつとかくると
ひとしくりやうてに
さしあげてなげいだせば
ゐあはせたるさるうさぎ
きもをひやししたがひける
〽ゑいや
うんとな
なんとどうだ
    〳〵

さるうさぎ
〽イヤハヤおそれ
いりました
〳〵〳〵

コマ5

金太郎いろ〳〵の
あそびをなしける
さるはきてんもの
にてこまをまはし
あいてをする
さるはあてごまを
するにとかく
まけてまけばら
をたちはをむき
いだしかほを
まつかにして
きやつ〳〵と
 ないてゐたり
      ける

金〽おそれ
たろう
おれがこまは
なんと
つよか
  ろう
そら
 どう
  だ

さる〽こんどは
しめたぞ

ほい
しめ
られ

さるとは
   〳〵

コマ6

けだものゝうち
にもくまはもう
ぢうゆゑひと
たびは金太郎
にはむかひ
たるが
なか〳〵ちから
およばずさん〴〵に
なげつけられる
これより金
太郎は
くまにのりて
みね〳〵たに〳〵を
かけあるかせばじゆつを【馬術を】
こゝろみるまたは
をり〳〵わが心に
そむくことあれば
まさかりを
もつてあたま
をさん〴〵に
うてどくま
はあやまり
いたりける

〽なんとつよからう
おれがこれから
てまへにのるからよく
かけあるけあるかぬと
またまさかりだぞ

コマ7

ある
とき
しかゞ
くわい
どう丸
のおたのに【=お楽しみに】
しておき
たるさつま
いもを
ひとつして
やりけるにあまり
うまくついみんな
くいければ金太郎
おゝきにはらを
たちしかをよびよせ
おほひにしかりあし
にていろ〳〵いじめる

きん
〽おれがたのしみに
とつておいたもの
をせしめてなに
くはぬかほをして
にくいやつだこんど
ぬすむとぶちころし
   てしまうぞや
しか
〽はい〳〵ごめんくだ
さいましあんまり
うまさについみんな
たべましたさて〳〵
さつまいも
ぐらいに
こうふまれ
てはつまらん
とこまつてゐる

〽もう
たいがい
   に
ゆるし
   て
やん
  な

コマ8

またあるとき
やまへあそびに
ゆきたるに
大ぼくのすぎ
にこのはてんぐ
いたりしを
木をゆす
ぶりてみな
おとしける
にてんぐも
しよせんかな
はぬとおもひ
ければあらそはず
金太郎にしたがび
あひてをする
〽どつこい〳〵
どつちらも
まけるな
かつたもの
にはほふびに
このはせん
   べいを
やりま
  すぞ
〽どつ
  こい
   〳〵
はな
 が
じやま
  に
なつて
とりに
  くい
はな
はだ
こま
るわけ
  だ

コマ9

ある日山あそび
してゐたりし
にとしふる
いのしゝいつ
さんにとび
きたり金
太郎を
きばにかけんとなす
をくはいどう
    まるは
ひらりと
みを
かはし
あばら
をどう

けた

しかば
さす
がの
しゝも
よはる
ところ

まさ
かり
にて
うち
ころ

けり

コマ10

このをりからみなもとのらいくはう
あそん【朝臣】四天わうのめん〳〵をめし
ぐしにんこく【任国】へにげかうみぎりこの
ありさまをみたまひぼんにん【凡人】
ならぬを
しり
給ひ
はゝを
よび
いだし
しよもうありければはゝは
よろこびたねんのしんぐはん【心願】
かなひしとおんれいまうし
くはいどうまるを
きやうくんし【教訓し】ちうぎ【忠義】
をつくしつかへよと
いひふくめもはや
うきよにのぞみなし
らいくはうあそん
を見
おくり
たて



やままた
山にこがくれ
てゆくへも
しらずなり
にけり
〽もはや
たい
めん
これか
ぎり
ずいぶん
たつ
しやで
さらば
〳〵

〽はゝびと
いづくへゆき
給ふいま
いちど
おん
かほ
見せ

たま

のふ
 〳〵

コマ11

くわいどう
まるはさかたのきんときと
なのりらいくはうの四天わう
となりちうぎをつくし
ゆうあいを【友愛を】あらはしまつせ【末世】
にそのなをつたへけるこそ
   めてたし〳〵
      〳〵〳〵
忠孝(ちうこう)の道(みち)をたがへず
  あゆびなばたからの山は
    目(め)のまへにこそ

猛獣のクマは最初は金太郎を襲うが、金太郎はまさかりでなぐりつけて手なづける。横で応援している母。
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