@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

信有奇怪会(たのみありばけもののまじわり)

https://honkoku.org/app/#/transcription/3B3F007B34BD47599101F93D290DB5C6/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。
 
たのみありばけもののまじわり
信有奇怪会

発行年:1796(寛政八)
作・画:十偏舎一九(十返舎一九

登場人物

ばけものの親玉、三つ目入道
その娘、ろくろ首のお六
見越し入道
 その他化物たち

坂田金平(さかたのきんぴら)
奴・どて平

物語(『化物尽』のコマ14以降と同じ内容です)

 ばけもの仲間も最近はパッとしたこともなく、金平のような手合いにへこまされている。おまけにばけものの小息子・小娘たちが行方不明になる事件が多発している。三つ目入道の娘お六も姿が見えない。人間の子なら野山を探すところだが、化物の子なら町の中を探すのだと言って、化物たちは笛と太鼓を鳴らしながら探して歩く。

 金平はばけもの好きで、ばけものと出会いそうなところで待ち伏せしている。そこへお六が通りがかるが、金時を普通の人間だとっておどかそうとして、逆に捕まってしまう。三つ目入道はお六が金時に捕まっていると聞き、誰か救い出してほしいと呼びかける。以前からお六とつきあっている見越し入道が名乗りをあげる。

 見越しは茨木童子渡辺綱のおばに化けて腕を取り返した話を思いだし、長い首を折り曲げて懐に隠し、面をつけて金平のおばに化ける。しかし綱とは違い、金平にはおばはいない。金平はだまされたふりをして見越しを屋敷に招き入れる。見越しはろくろ首のお六を見つけるが、お六は金平に首を飴のようにのばされて、その首で庭の木に縛りつけられていた。

 お六を連れて逃げようにも奴のどて平が見張っているため近づけない。なんとしても逃げたいお六は縄を食いちぎる気持ちで自分の首を食いちぎって「やれ嬉しや」と見越しのもとへ駆け出すが、肝心の首がなかった。

 見越し入道はすごすごと逃げ帰る。三つ目入道はお六のことを聞いて悔しがり、自ら金平の館へ踏み込むが、金平は金棒を振り回し、三つ目入道も逃げ帰るしかなかった。それでは面目が立たないので、ミカン籠に紙を貼り、金平の首にみせかけて大層な車に乗せて引き回してみせた。それを見たばけもの仲間は大喜びしたが、雨が降ってきて嘘がばれてしまう。

 ばけものの親玉株である三つ目入道も見越し入道も歯が立たなかった金平にはどうあがいても勝てないと思った化物たちは箱根の先に逃げ去った。金平はその功績を認められ源頼光から褒美をもらう。ばけものはいなくなったがまだ鬼は残っているのでまとめて西の海へでもおっぱらってやると言って終わる。

メモ

  • 妖怪の頭は三つ目入道
  • 見越し入道も親玉株とされている
  • 妖怪の敵は坂田金平(金時の息子)
  • なぜか茨木童子渡辺綱に腕をとられたことになっている。
  • 箱根の先(江戸中期以降、世の中が洗練されて野暮とばけものは箱根からこっちにはいないと言われていた)
  • 西の海(ちくらが沖とも言う。人間に負けたばけものが行くどこか遠いところ)
  • 太白入りの飴(大白は白砂糖のこと。麦芽糖ではなく白砂糖の飴)
  • なだいなだい(名代名代。有名だということ。露店などでものを売る時の決まり文句)
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自分をしばりつける自分の首を食いちぎって逃げようとしたお六
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金平の首が張りぼてだとバレてしまった場面