@chinjuhさんと読む草双紙・はてな出張所

ばけものが出てくる草双紙のあらすじ等をまとめたものです。草双紙は江戸時代の絵本です。

作意妖恐懼感心(みたてばけものおそろかんしん)

https://honkoku.org/app/#/transcription/AD54CA254609CC9CA1389BEB53C21C27/1/
# 上記リンク先ではくずし字の原典と、それを現代の文字に置き換えた翻刻文の両方を読めます。

みたてばけものおそろかんしん
作意妖恐懼感心
発行年:1783年(天明三)
作:不明
画:北尾政美

登場人物

見越し入道、化物の親玉。山奥で隠居中。
ばけものたち
山師
画家
遊女

物語

 見越し入道が山奥へひっこんでしまい、お頭がこれではやっていけないと、ばけものたちが古寺の縁の下で謀反の相談をする。
 ある山師が都会では儲からないので田舎へ行こうと山道にさしかかると、待ち伏せしていた見越し入道がももんぐわぁと現れる。山師はさっそく「先生見せ物に出る気はないか」ともうけ話を持ちかける。うっかりすると逆に騙されかねないと慌てて逃げる見越し入道。
 何か新しい図をと悩む画家の前に、なんとか人をおどかそうと工夫して現れたばけもの(挿し絵は逆女か)。画家はこわがるどころか化物を写生する。
 見越し入道はなんとか人を化かそうとしたが、昔とは違い誰もこわがらない。まずは世の中のありさまを見ようと天気のいい日に雲の上から世の中を見物する。
 古い着物を染め直して別のものに化けさせる。
 花のお江戸では初がつおがどんなに高くても買って食べる。むしろ高くなくては初がつおではない。そのくせ着るものはケチってそんな値段なら夏でも袷を着るという。
 蓄えのない者は夏でも袷の綿を抜いて着るが、人から見とがめられたら素知らぬ顔で「一疋買って袷と小袖に縫いました」と化かす。
 着物は染め直して着る。着物も化けるのだ。
 人を食った客。
 顔の大きな客。
 人間のほうがよく化けるので、うかうかしていられないと見越し入道は一世一代の席化け興業をし大もうけする。そのお金で化物屋敷を四、五ヶ所も買って心穏やかに今度こそ楽隠居で暮らしたということだ。 

# 冒頭は化物仲間が見越しに謀反を働こうとしているが、次のページでは急に見越しがやる気を出して人を化かしに行き、それっきり謀反の話は出てこない。

メモ

  • ばけものの頭は見越し入道で隠居中。
  • これではならずのかばやき
  • 唐桟留、縞模様の一種。桟留縞とも。室町末期に南蛮貿易でもたらされた絹織物の一種で、インド・コロマンデル地方のサン・トメ(聖トマス)が訛ったものと言われている。
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雲の上から人間の世界を見る見越し入道